こんにちは
あるときはアニメーター、またあるときは水彩画イラストレーター・・・のかんざきかりんです。
お待たせしました、今回は水彩画制作手順の解説です。
(前回、道具の説明はこちら 水彩画で使う道具わたしの場合 )
毎度申し上げますが、道具にしても、描き方にしても、ほんとにみなさんいろいろなので、
何を描くかにもよりますし、これがベスト!というわけではなく、
たんに私の場合はこうしてます~という一例になります。
ご参考になれば幸いです。
2月に制作していました、ベッキーキャンドルさんのための水彩画
まず完成はこちら。
打ち合わせで、オーナーさんより、
イギリスのコッツウォルズあたりの風景、少女(ベッキー)とキャンドルをいれてください、
というだいぶ自由なオーダーをいただきました。
イギリスのお庭や田園風景大好きなので、わくわくします。
このへんの写真集はわりと持っているので今回は手持ちの資料でいけました。
資料は図書館で借りてきたり、買ったり、ネットで検索したりすることもあります。
よい資料に出会えると、イメージがふくらんだり、作品のリアリティが増しますよね。
風景画だとその場所に取材にいけるのがいちばんですが!
1・大ラフ
(モチーフ、構図を決める)
私はまずは鉛筆と色鉛筆で大まかな構図を練ります。
キャンドルをいれるために、近景によくわからない階段?
右側が盛りだくさんなので、左にバランスをとるためにお花(しゃくやくのつもり)をいれました。
川沿いにしゃくやくは、土質が合うのだろうか・・・と思ったりするけれど
今回もパッケージにご利用いただく予定のイラストなので、絵面優先で。
ラフは2,3案提案させていただくことが多いです。
もう一枚はガーデンでお花を摘んでいるベッキー(と犬をいれたい)
お花好きなので、これはフォックスグローブ、これはデルフィニウム・・・と力はいってしまいましたが、
キャンドルをうまく近景に配置できませんでした。
そんなわけで、オーナーさんにチェックしていただきましたら、最初の案に決定。
2・ラフ
あと一回で清書できるよう、書き込みます。
仕上げるサイズのA3くらいの紙にかいています。
悲しいかな、A4のスキャナーしかないので、分割してスキャンしているのが・・・わかりますね?^^;
だいたいの色あいも決めていきます。
このとき、犬はボーダーコリーにしようかなあと考えていました。
3・線画
私は、前回も書きましたが、ペン入れができない人なので、鉛筆で清書していきます。
それをスキャナーでデジタルにし、濃さを調整しています。(photoshop)
淡い水彩画にしたいときは鉛筆の強さのまま、はっきりしたいときは濃い目にします。
今回は淡目にしようと思います。
犬はオーナーさんのご希望でコーギーになりました。
私もそうですが、絵本作家のターシャ・テューダーさんのファンなんですよね^^
4・印刷
しかし!ここへ来て水彩風景画ひさしぶりだったため、勘が鈍っていて、
画用紙で試し印刷してみてから高級水彩紙を使うのですが、
画用紙でちょうどよい色でも、水彩紙では薄くなるんですよね・・・
そんなこんなで失敗し、紙高いのに2枚無駄にしました><
アルシュですよぉ・・・
それから、画面ではわからないと思いますが、インクは真っ黒でなくやや焦げ茶色にしています。
今回は緑の風景なので、その方が優しくなると思いました。
プリンターは、イラストレーターご用達といわれた(電機屋さんで)
EPSONのPM4000-PX 顔料インクです。
そうでないと水で溶けてしまいますからね。
もうだいぶ古いので、大事に使っています~(かれこれ・・・7年くらい?)
アマゾンで見てみたら、もう中古しか売っていません!
製品保障もきれているし、インクも高いので新たな購入はお勧めしません^^;
代替機種を探してみてくださいね。
5・水張り
インクはすぐ乾くのですが、念のため気持ち時間をおいてから、木製パネルに水張りします。
紙って水に塗れるとゆがんでしまいますよね。
なので、いったんぜんぶぬらしてやわらかくなったところを
板に留めて乾かし、ピンとさせることを、水張りといいます。(たぶん。習ったことないので・・・)
裏にのりがついた水張りテープで四辺をとめたところです。
まだすこし紙にしわがありますが、乾けばきれいに伸びます。
急ぐときは扇風機とかドライヤーをあてて乾かします!
デジタルだとつい、ぶっとおしで作業していまいがちですが、
アナログ作業はこうした待ち時間にちょっとお茶でも淹れて~と休憩できるのが、いいですよね。
6・予行練習
水張りと前後しますが、本番の高級水彩紙で失敗したくないので、ケナフ紙で予行練習しました。
大きい絵のときはやったほうがいいんですよね。熟練者は必要ないかもしれません。
私はときどき水彩画の仕事がはいると描く、というレベルなので・・・
水彩画って塗る順番間違うと失敗することがあるので、手順を確認しながら。
これで右側の黄緑の木が無駄に大きい!と気がつき、線画を修正しました。
6・着彩
水張りがすっかり乾いてから、まずは空から塗ります。
それから左から陽がさしていると考えて、影になるところを先に。
風景画ではどちらから陽がさしているか認識しておくといいですよね。
基本的には奥から塗っていきます。
木々はとおくのほうは青っぽくかすみ、近くなるにしたがってはっきりとさせます。
わたしはざっくり、
ここは遠景、このへん中景、ここが近景、と三っつくらいにわけて、
意識して線の強さと書き込み具合、色の濃さ、タッチなどを加減しています。
例によって、(道具編のマスキングインク参照)川面でにじみぼかしを使う予定なので、
近景のお花とキャンドルをマスキングしています。
しかし。ここまでの着彩で一日かかっているんですけど、これはここまででボツにしました・・・
もうすこし春っぽいやわらかい日差しの感じをだしたかったのに、遠景はっきり塗ってしまって
お天気悪そうに見えてしまう。左側の小屋も目立ちすぎ。脇役なのに。
そんなわけでまた印刷からやりなおしです!スタートにもどる~~
塗りなおしたものです。遠景が淡くなっているのがわかるでしょうか。
近景のマスキングをして、川面のにじみぼかしをいれたところです。
川面は予行練習のほうがよかったじゃん、と内心つっこみつつ。
カメラ寄ってみましょう~
マスキングを指でこすってはがしたところ。はがすの楽しいですよ。
しゃくやく、青みかかったピンクがいいか、温かみのあるサーモンピンクぽくするか、悩みました。
が、サーモンにしました。葉色が青っぽいので、お花ひきたつように。
影になるところを先に塗っています。
キャンドルはグラデーションがきれいな手作りキャンドル。
ベッキーキャンドルさんの看板商品です。
近景にはっきりした色がはいると絵が引き締まってきますね。
これでほぼ完成・・・!でしょうか。
このあと川面とかお花にホワイトを入れます。
ふう~~
7・スキャン、補正、デジタル処理
例によってA4スキャナーで二回にわけて取り込みます。
この絵はアルシュの細目(普通の水彩紙の中目くらい)の凹凸があるのですが、スキャナーがそれをひろってしまいますので
それを消すために逆向きにももう一回スキャンして、合成することになります。つまり4回、うぃ~~~ん とスキャンします。たいへん。
(こちらを参考にさせていただきました スキャン時の紙の凸凹を軽減する技 )
そうやって合成、補正したのがこちら
紙の生成りの色を抜くとだいぶシャープになりますね。
オーナーさんにチェックいただき、
「昼間の絵なんだけれど、できればキャンドルに火をともしてください」とのことで、
炎をデジタルで追加してみました。たしかにキャンドルの存在感が増しました。
これで納品。長かったです!
ながながとここまでお読みいただいた方、ありがとうございます。
このあとはずーっとデジタルのお仕事が続いていますが、
やはり水彩画は間を置かずに描いていないと、いろいろ技術が定着しないな~と思います。
思い出すのに時間がかかったり、失敗したり。
スケッチとはまたちがうんですけど、ちゃんと時間つくって描かないとですね。
以上です!
次の機会は参考図書をご案内しようかなと思います。
私はどこかで教わったことがないので、だいたい本を読んだり見たりして参考にしています。
それではまた~!
★☆★フォローお待ちしています★☆★
・かんざきかりんTwitterアカウントはこちら→@karinkanzaki
・かんざきかりんfacebookページはこちら→イラストレーターかんざきかりん
かりんさん♡
じっくり読んでしまいました!細部にこだわった水彩画、さすがと思いました(*^^*)
本番を描く前にしっかりと練習されるのですね~。
見せていただいてありがとうございました(*^^*)